8.09.2011

映画 [どん底]

[どん底]
黒澤明監督 1957年(昭和32年)

江戸時代末期の貧乏な長屋(といっても二部屋しかなく、一部屋は末吉
(三船敏郎)が寝起きし、もう一部屋は申し訳程度のいろりと土間で構成
され、寝る場所は押し入れのようなところを2段ベッドのように使って
いる)に暮らす、その日暮らしの生活をする人々の話。

長屋の住民は「衣食足りて礼節を知る」の言葉通り、粗雑で、シニカル
で、せいぜいが酒をおごるくらいしかできない。

この長屋に、およそ長屋の住人とは異なる性質を持ち合わせた巡礼(左卜
全)が登場する。すべてを受け入れ、すべてを許し、諍いごとは笑いに変
えて避ける術を知っている、

この巡礼が、肺を病み、もう長くは生きられない女性に、
「死んだあとの世界は、阿弥陀がいて、苦しくも辛くもない」
と、死を迎えることは怖くないことなんだと励ます。

巡礼のこの言葉を聞いた彼女は
「もう少し生きていたい。
死んで楽ができるのなら、もう少し今の辛いのを我慢してもいい」
という。

これは、とてもキリスト教的な発想だよね。
キリスト教は洗礼さえ受ければ、天国に行くことができる減点方式で
仏教は徳を積まなければ極楽浄土には行けない加点式、じゃなかったけ?
それとも江戸時代末期は、仏教は庶民の手もとにはなかったのか、原作
はゴーリキーの「どん底」なので、わざとそのイメージを取り入れたか。



最後の方になって、はたと気がついたのだけど、

もしかして、BGMは一切なし?
無駄な効果音(じゃじゃーーん!みたいなの)もなかったと思うのだけど、
どうだろう?


まるで、演劇の舞台のような作品でした。


いやー、黒澤明はほんとうに面白いですね。

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